当店で販売しているアイルランド製高級コンサーティーナの「ザ・クレア・コンサーティーナ The Clare Concertina」(以下、クレア)。いつの頃からか蛇腹がゆるくなったため、自分で修理を試みました。
クレアはアイルランドのIrish Concertina Companyが製造・販売している高級機種のコンサーティーナで、上位から2番目のモデルです。
さてこのクレア、店頭に展示していたものがいつの頃からか蛇腹がブカブカにゆるくなってしまいました。ボタンを押さずに蛇腹を押し引きすると、スルスルと空気が抜けてゆくのです。これは奏者ではない私にも、問題があると分かります。
この件について製造元に修理対応を依頼すると「自分でやれ」と一蹴されましたので、少し気が重かったのですが、開腹して修理してみました。
最初に疑ったのは、アゲミというリードの反りが大きすぎて、隙間から空気が抜けているのではないかということ。しかし、写真のとおり、アゲミはリード一枚分あるかないかで、目立った隙間は確認できませんでした。それに、リードをいじるのはなるべく避けたかったので、他の原因を探りました。
ここで考えたのは、リードがついている金属部品「リード・フレーム」とそれを固定する木部「リード・パン」との隙間です。クレアは、McNeela製のようにリード・フレームをロウづけで密閉するのではなく、ねじで上からリード・フレームを押さえつけているデザインです。このデザインはリードの取り外しを容易にする反面、気密性の点ではロウに劣るかもしれません。
そこでドライバを使って慎重にネジの緩みを確認したところ、いくつかの箇所で緩んでいることが確認でき、これらをきちんと締めました。
また、リードへの空気の流れを止める弁の役割をする「さぶた革」が反り返っていた場所があったため、上から指でなぞって伸ばしました。
一応、パッドの隙間がないかも確認したのですが、目視の範囲では、特に隙間はなさそうでした。
これでカバーを閉じて確認したところ、明らかに空気漏れが改善しました。
おそらく、湿度などの都合でリード・フレームを押さえつけるネジが緩んだのかもしれません。読者の皆さんも、もし同じ構造のコンサーティーナで空気漏れが疑われる場合は、リードをいじる前にまずはネジを締め直してみてください。
さて、この「蛇腹がゆるい」件ですが、コンサーティーナという楽器は蛇腹もエンドも継ぎ目だらけで、またリードの隙間やパッドの隙間など、完全に密閉されてはいない楽器ですから、ある程度は空気が自然と漏れるものだと認識しています。
バグパイプのように完全にエアタイトにすることができると仮定して、ボタンを押さない状態で蛇腹を押し引きしたときに、蛇腹がびくともしないくらいガチガチに硬いと、却って演奏しにくいのではないでしょうか?
ある程度は蛇腹の遊びが必要で、その上で蛇腹の開くスピードをどの程度に調節するのかは、奏者の好みにもよるでしょう。
奏者の皆さんも、ご自身で「アゲミ」やパッドのバネの硬さを調整することで蛇腹のスピードをお好みに調整できることは、知っておいて損はないかと思いました。
クレア・コンサーティーナは京都店と東京店で試奏・購入ができます。