夏至のスウェディッシュ・セッション:hatao

ライター:hatao

先日6月17日、京都のfieldにて第二回目のスウェディッシュ・セッションを開催しました。第一回目は今年3月の「ケルトの笛屋さん京都field店の5周年記念パーティ」で行いました。2回とも私hataoとフィドルのLiricaさんがホストです。

スウェディッシュ・セッションというのは少々説明が必要な語です。というのもスウェーデンには本来、アイルランド音楽のように飲食店に音楽家が集まって気楽にチューンを演奏するような文化がありません。

スウェーデンでは主に夏にスペルマンスステンマ(音楽家の集い)と呼ばれる集会でセッションを行いますが、これはアイルランド音楽のように同じ場所で毎週・毎晩のように行われているわけではありません。音楽祭に付随するオフィシャルで特別な集会です。スウェーデン音楽にも、日本のように「ハレとケ」があるのでしょうか。年中あるわけではありません。

ステンマについては、ニッケルハルパ奏者の本田倫子さんのブログもご参考ください。

https://blog.goo.ne.jp/nyckelharpa/e/3cbe9eeec88b2d596e5f6cd37c01ae14

さらにスウェーデン音楽は地域性がとても豊かなので、基本的にはそれぞれの地域の音楽を合奏します。アイルランド音楽のように全国共通のスタンダードのようなレパートリーがあるわけではありません。

その例としてスウェーデン音楽の曲集「スヴェンスカ・ローテル」という本は地域ごとに分けて編集されています。

また、楽器も多様なのですが、楽器ごとにレパートリーや演奏されている地域が異なります。有名な楽器「ニッケルハルパ」はウップランド地方で主に演奏されており、全国で演奏されているわけではありません。

笛を例にとっても、アイルランドではティン・ホイッスルが1本があれば基本的には国内どの地域の曲も演奏できますが、スウェーデンでは日本の祭り囃子の笛のごとく、村が違えば笛もレパートリーも違うといった具合なのです。

つまり何が言いたいかというと、スウェーデン音楽は極めて多様なためセッションがなかなか成立しにくいのです。私とLiricaさんのレパートリーも全く異なります。

そこで、前回では二人がそれぞれ10曲、合計20曲を選んでお互いに学び、参加者には事前に楽譜を配布して予習をしてもらいました。そして、楽譜を見ながら演奏してもOKということにしました。

準備していただけあり合奏はとても楽しかったのですが、欲張りにさまざまな地域・楽器の曲を選んだので、あまりに脈絡がなく散らかった演奏になってしまった点を反省し、第二回目では笛もフィドルも等しく演奏されているヤムトランド、ダーラナ、スコーネに絞り、時間を地域ごとに区切りながら進行しました。

ヤムトランドは縦笛、ダーラナはバグパイプ、スコーネはフルートという風に楽器を変えつつ、Liricaさんは演奏スタイルを変えつつ、少し統一感のある音楽になったかと思います。

日本では近年、実力を備えたスウェーデン音楽演奏者が各地で活躍していますが異なるためセッションをするには演奏スタイルやレパートリーの調整が必要です。アイルランド音楽にも多少はそのような性格はありますが、スウェーデン音楽ではさらに地域スタイルが豊かです。

まだまだ試行錯誤段階ではありますが、次回は冬至の頃に企画をしたいと話し合っています。興味のある方はぜひご参加ください。