ケルト音楽が楽しめる吹奏楽曲 5選

ライター:櫻井静

アイルランドやスコットランドなどの地域で生まれた「ケルト音楽」は、世界中の様々な音楽ジャンルに影響を与えています。日本で一般的なJ-POPにもその影響が見られたことを以前の記事で書きましたが、今回は、吹奏楽シーンにおけるケルト音楽を見ていきたいと思います。

吹奏楽は、ブラスバンドとも呼ばれ、管楽器をメインとした編成の音楽をいいます。世界中で人気ですが、特に日本では小中学校や高校におけるクラブ活動や部活動の一つとして、盛んになっています。

吹奏楽では通常、吹奏楽のために作曲された楽曲を演奏するほか、クラシックからポップスまで幅広いジャンルの原曲を吹奏楽アレンジした楽譜で演奏します。その中に、民族音楽をもととしたものを取り入れる動きがあり、ケルト音楽もその一つといえるでしょう。

学生のみなさんの中には、クラブ活動や部活動で演奏する曲について調べて、この記事にたどり着いた人もいるかもしれません。その曲を誰が作ったのか、どんな曲でどんな特徴があるのかを知ってから演奏すると、コンサートやコンクールでもより良い表現につながるのではないでしょうか。また、ケルト音楽の使われている音楽を通して、ケルトの地域について、知らなかったことを知ることができるかもしれません。

これからご紹介する楽曲では、疾走感あふれる「リール」や、踊りたくなる「ジグ」、そして緩徐楽章(ゆったりとしたテンポの楽章)で演奏されることが多い「スローエア」といった、曲調のまったく違う複数の曲を組み合わせているものが多く、音楽的にも秀逸な作品の数々となっています。学生の吹奏楽部だけでなく、世界各国の老若男女に、様々な編成で演奏されています。

今回は、吹奏楽で演奏できるケルト音楽として、有名なものを5曲、ご紹介したいと思います。

「リバーダンス」(RIverDance) Bill Whelan作曲、建部知弘編曲(動画の吹奏楽版)

一世を風靡した舞台「リバーダンス」は、アイリッシュダンスやアイルランド音楽を中心とした舞台作品です。表題曲の「Riverdance」以外にも、曲調の異なる20曲以上が使用され、それぞれが人気を博しています。多くの名曲が吹奏楽編曲され、小規模から大規模まで様々な編成で演奏されています。筆者も、この曲を「ポップスオーケストラ」(ビッグバンドにバイオリンを加えたもの)という編成で演奏したことがありますが、バイオリンがフィドルの役目を見事に果たし、普段のポップス音楽とは違った民族音楽らしさを楽しめました。

建部知弘編のこのバージョンでは、美しい「Cloudsong」、スリップジグの「The Dance of the Riverwoman」、明るく元気な印象の「Earthrise」、そしてフィナーレを飾る「Riverdance」の4部構成となっています。

叙情的で語るような前半、哀愁を帯びた民謡調なメロディー、エネルギッシュな混合拍子による繰り返しのたたみ掛けるような舞曲。一度聴いたら、観たら忘れられない印象的な作品です。(建部)
https://www.brain-shop.net/shop/g/gCOMS-85102/より引用

また、打楽器には、ケルト音楽で使用される民族楽器「バウロン」が使われるなど、ケルト音楽らしさを再現することに余念がありません。

「ケルトの叫び」(Cry of the Celt) Ronan Hardiman作曲、Peter Graham編曲

Ronan Hardimanはアイルランド出身のニューエイジ音楽の作曲家。原曲は、先述したリバーダンスとともに有名なアイリッシュダンスパフォーマンス「Load of the dance」(1996年)の中で使われた一曲。「Nightmare」「Suil a Ruin」「Breakout」「Lament」「Victory」からなる5部編成の組曲になっており、全て演奏するとなんと19分の大曲となっています。そのため、全曲演奏されることは稀のようです。

「ゲールフォース(Gaelforce)」Peter Graham作曲

先ほどの「ケルトの叫び」の編曲者のPeter Grahamが、ノルウェー王立海軍のバンドのために作曲したものです。「Rocky Road to Dublin」「Minstrel Boy」「Toss the Feathers」からなる三部編成ですが、全曲演奏しても約7分。短めで演奏しやすいことから、コンクールなどで使用されることも多くなっています。第二楽章の「Minstrel Boy」は日本語で吟遊詩人の少年という意味で、曲名を知らなくても、この叙情的なメロディはどこかで聴いたことがある人が多いでしょう。また、「Toss the Feathers」は2分の2拍子のリールで、非常に有名な曲です。

「ケルト民謡による組曲(Suite on Celtic folk songs)」建部知弘編曲

「March」「Air」「Reel」からなる三部編成で、数少ない日本人作曲家による作品です。
「March」の冒頭ではイーリアンパイプスのドローン管の音色を低音の金管楽器で再現していたり、2曲目冒頭ではティンホイッスルを思わせる高音のピッコロソロから始まったりと、ケルト音楽ならではの民族楽器を、それぞれ吹奏楽の楽器で再現しているのが面白いところですね。今回ご紹介している他の曲に比べると難易度は低めで、小中学校でも演奏されることが多いようです。筆者は中学生の時に、吹奏楽コンクールでこの曲を聴いたのがきっかけで、はじめてケルト音楽を知りました。二曲目の「Air」は、「黄色い村の門」と名前のついた「スローエア」で、この美しい旋律には、言葉で表現し尽くせない、なんとも言えない哀愁が漂っていて、すっかりとりこになったものです。

「ケルトの賛歌と踊り(Celtic Hymns and Dances)」Eric Ewazen作曲

”ケルトの賛歌と踊り”は1990年3月にJames Fudaleに捧げられ、the Berea (Ohio) 高校の吹奏楽部に初演された。1つの楽章からなるこの曲は、中世やルネッサンス音楽からインスピレーションを得て描かれている。メロディとテーマは創作作品であるにもかかわらず、旋法的和声法、特徴的なエネルギッシュなリズム、色とりどりの管楽器のオーケストレーションが、古代の音楽を思い浮かばせる。この曲には牧歌的なバラードや英雄のファンファーレ、生き生きと朗々としたフィナーレで最高潮を迎える喜びの踊りが含まれる。
https://www.windrep.org/Celtic_Hymns_and_Dancesより意訳

このように、アイルランドやスコットランドなどの地域で生まれた「ケルト音楽」が、吹奏楽の作品にも大きな影響を与えています。ケルト音楽の名曲を、吹奏楽でも、ぜひ演奏して、聴いて、楽しんでみませんか?

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